減り方で判断する?
最近、体調を崩してしまい、病院で薬をもらいました。私は少し体調がよくなってくると薬を飲み忘れることが多いんですが、その薬は期間中にきちんと飲みきれました。どうしてだろうと気になって思い出してみると、その薬は減り方を見ればいつの分を飲んだか分かるようになっていたんです。
朝昼晩1包ずつ飲む薬。それが3包ずつ繋がっている仕様だったので、1包だけになって残っていたら、朝と昼は飲んだということ。2包残っていたら、朝しか飲んでいないということです。朝から薬を飲みはじめたので、たまたまそのサイクルになっただけですが、その薬が全部繋がっているような薬だったらきっと飲み忘れていたと思います。減り方で判断できる工夫。お店である商品がどれだけ売れたのかを知る方法は、売れた数をカウントする方法もありますが、売り場に残っている数をカウントする方法もあります。増えたり減ったりする数量を把握する方法を考えようとすると、どうしたら正確に数えられるか?といった発想になりがちですが、残りを分かりやすくするといった発想もアリかもしれません。
穴は埋めやすい?
ある雑誌の記事で、フリーの記述問題よりも穴埋め問題のが正解率が高いという興味深い内容を紹介していました。とりわけ文字数まで決まっているような穴埋めは、解答者が考えやすい傾向があるそう。確かにそう言われると、穴埋めという丁度いい制限が、想像力を掻き立てるような気もします。
ジャンルは全くちがいますが、キュウリ竹輪や辛子レンコンの発想もきっと同じ。どちらも穴が開いていたからアイデアが湧きやすかったのではないでしょうか。私たちは相手に何かを考えてもらうようなとき、分かりやすい表現を使ったり、ヒントを与えたりしますが、それでも相手が考えづらそうにしているケースがよくあります。もちろん投げかけ方の上手い下手の個人差はあると思いますが、そもそも考えづらいことは考えやすい表現に変える必要がある場合も…。抽選でプレゼントが当たるクイズなどで、「2020年のオリンピックはどこで開催されるでしょう?」ではなく、「2020年○○オリンピック」といった表現が多いのは、誰もが考えやすいからかもしれませんね。
知っていると思考がストップ?
アイデアやデザインを考えているとき、思考がストップしてしまう瞬間があります。それは、考えはじめたことが既に世の中に存在するとき。似たアイデアを知っていると、「これではパクリになる…」と、考え進めるのを躊躇してしまうんです。でも、そこで止めるのは非常にもったいないこと。
似たようなきっかけから最終的に別の何かに開花したり、途中で別のアイデアとくっついて新しいアイデアになることは多々あります。それに、全く同じアイデアなんて世の中にはありません。他人とは違う発想で…と根詰めるほど、思考の範囲が狭まっていくので、似ていたってOK!ぐらいの気持ちで考えてみるのがオススメです。私は以前、自分のアイデアが世の中とカブったときに思考を止めてしまう癖がついていました。そして、その頃は「世の中に無いものは何か?」という考え方に縛られていました。当然、そんな入り口からではアイデアが展開することもなく、突拍子もないことばかり考えるように…。誰でも考えるようなことにほど、大事なヒントが詰まっていたりします。
プロがプロに教えることはない?
私はデザイナーとして仕事をさせてもらっていますが、まだまだ自分の力を未熟に感じていることもあり、あるとき出会った第一線で活躍しているデザイナーさんに「デザインを教えてもらえないか?」と懇願したことがあります。もちろん、そこにには少なからず憧れもあり…。でも、その返事は意外なものでした。「プロがプロに教えることはない」
断られるのは承知の上でしたが、私はてっきり「教えてもらえるだけの土俵に上がっていない」か、「特別扱いはしない」「教える時間がない」といった理由だと思っていました。でも、もらった答えは全く別。「同じプロとしてやっている以上、基本的なことは学んできたはず。そこから先は自分で学ぶだけ。」そういうことだったのだと思います。その時の会話で“プロ”という言葉が何度も出てきたのが記憶に残っていて、それだけプロ意識を持って仕事をしているのだと今思い出しても恥ずかしくなります。デザインは他人に教えられるものなのか?といった質問は、私もこれまで何度かもらったことがありますが、確かに教えられることは基本的なところだけで、細かなニュアンスや感性によるところは人それぞれ。教わるところは限られていて、自分で学ぶしかないのかもしれません。
柔軟に対応できる準備?
空間づくりの仕事をはじめたばかりの頃、まず直面したのは、図面と実際は同じではないこと。数センチの誤差は当たり前ですし、時には全く異なっていることもあります。でも、現場で対応する人はもちろん、空間をつくる人たちは、どんな状況でも柔軟に対応できる準備をしています。
だいぶ前にお店をデザインする機会があり、現場に何度も足を運んでいたんですが、目的は進捗状況の確認ではなく、図面と現場の差異の対応。「ここ入らないけど、どうします?」「図面では○○だけど、こうとった方がキレイに処理できますよ!」など、職人さんと何度も調整を重ねたのを覚えています。それが私の中でとても良い経験になっていて、以来、空間づくりのようなケースでは、多少の違いがあっても現場で困らないような準備や設計をするように。“ピッタリにしすぎない”ようになりました。事前に細かく考えるのは当然ですが、少し多めに材料を準備したり、寸法が違っても収めることのできるような設計にしたり、柔軟性を持たせることも大事なこと。スムーズに事が運ばなかったり、どこかで進行が止まってしまうとしたら、それは柔軟性が足りないからかもしれません。
単純明快で強いメッセージ?
とあるコンペで、受賞者の学生が審査員の方たちに選考基準について質問をしていました。答えは皆同じで、シンプルであること。もう少し噛み砕いて言うと「単純明快でメッセージの強いもの」でした。他のコンペでも、同じような話をしていたのを覚えています。
加えて、「選考では全く悩まなかった」と
いう話を何度も聞いたことがあります。それは、人は変わっても基本的な判断基準が近いから。複雑で難解な作品も、時には目にとまるかもしれませんが、強く単純明快な作品の前では薄れてしまうのでしょう。これまで「シンプルに、シンプルに!」と言われたことは多々ありますが、何度かそういった経験を重ねて、表現がシンプルなだけでは魅力が足りないことを知りました。メッセージがシンプル。コンセプトがシンプル。課題の理解がシンプル…。シンプルに捉えなければいけないことは、表現以外にもたくさん。シンプルと言われながら、自分のシンプルな表現を受け入れてもらえないときは、他のことがシンプルかどうかをチェックしてみるのがオススメです。私もまだまだ頭でっかちなので、日々、シンプルについて勉強中です。
つくりながら詰めること?
アイデアを形にする。その形を完成させるまでには、大きく2つの詰めの段階があると思っています。1つは形にする前の詰めで、もう1つは形にしてみた後の詰め。どちらの詰めが甘くても良いモノはできないと思っています。
例えば、サンプルを制作するには、時間も費用もかかります。でも、そこを省けば、“形にした後の詰め”ができません。それは、どんなに事前の検証を行っても補えないこと。サンプルを実際に手にとって使ってみて見つかる課題がたくさんあります。それを解決して完成度を高める。“形にした後の詰め”は、絶対に必要なことだと思っています。一方で、形にした後に詰めればよいという考えもありますが、それはそれで意味がありません。詰めきれていないものに対して、いくら検証をしたところで時間を無駄にしてしまうだけ。そこで出てきた課題は、事前の検証が甘いから出てきたものなのか?形にしないと分からないことなのか?が曖昧で、大抵は直しようのない、新たに考えた方が良いような状態になってしまいます。事前の詰めに頼りすぎても、形にした後の詰めに頼りすぎても、良いものにはならないと思っています。
閃いたときほど冷静に?
その場が盛り上がっていたりすると、何も疑わずに「良いアイデア♪」として進めてしまうことがあります。パッと自分の中で会心のアイデアが閃いたりしたら危険信号。もうそれは「良いアイデア♪」でしかなくなります。私はもろにそのタイプなので、勢いに任せず冷静に判断することを常に心掛けています。
ダジャレのネーミングなどは特にその傾向がある印象。(本当に適当な例ですが、)ショッピングモールで子供の見守りサービスをすることになり、そのネーミングを考える。そんなときに、“モール”と“見守り”を掛けて「ミマモール」というネーミングが思い付いたら、きっとそこから抜け出せなくなります。良さそうなアイデアだから。ダメ出しがしづらい内容であればあるほど、そのアイデアは固くなっていきます。フラッシュで思い付いたアイデアもそうですが、メリットがたくさんあるアイデアや、ロジカルな考え方で生み出されたアイデアは、より客観的に冷静に判断するのが難しい印象です。「閃いた!」「行けそう!」と思ったときほど気を引き締める。気になる点を解消するまで進めずに停滞しているのもよくないので、ときには勢いに身を任せてもよいこともありますが、冷静に見つめ直すのも大事なことです。
この人にだけ誤解を招いた表現?
むかしから自分の考えたアイデアやデザインを、家族や友達など身近な人に見てもらっています。そこで「分かりづらい」「意味が分からない」といった意見が出たら、それは一般的には「分かりづらい表現」「意味の伝わらない表現」だということ。そう捉えるようにしています。
以前、これなら誰でも同じように伝わる♪とチーム内で何度も確認し合った表現がありました。それを見て気になる点があっても、誤解を生まないように注釈も入れ、安心して公開。しかし、その表現についての問い合わせをたくさん頂きました。ただ、問い合わせの内容は、その表現にきちんと記載されているもので、全てを読めば分かる内容。現場でも「いやいや、ちゃんと注釈を入れているよ」といった声が上がりましたが、結果的に誤解を招いてしまいました。だから、その表現は誤解を招く表現だったという話です。アーティストが表現するような、分かる人には分かる表現はもちろん大切ですが、多くの人にできる限り同じ解釈をしてもらうように伝える表現もある。「なんでこれで伝わらないの?」と一度でも思ったことがあったら、自分の表現では伝わりきっていない可能性があります。
おかしな文字の並び?
「クハE1234」などの電車に記載してある車両番号。子供の頃から、大人になった今もつい見てしまいます。普段見かけることのないおかしな記号の並びなので、気になってしまうんですよね。見慣れた文字列は安心感を与えますが、見慣れていない文字列は「?(=興味)」を与えます。
長めの文章を書く際、スマホやPCで入力をすると自動で改行されますが、そのままにする人と読みやすい位置で改行する人がいます。ただ、相手に与える印象まで考えていないこともしばしば…。読み手に分かりやすく伝えて安心感を与えたい内容なのに、見栄えをよくするためだけに改行位置を揃えたり、興味を持ってもらいたいのにスラスラ読めたり、やっていることと目的が一致していないこともあります。スマホやタブレット、PCといった様々な情報端末で閲覧するメールやWebサイトの文章だったら、自動改行の方が適している場合もありますが、印刷物だったら目的を意識した文章にできます。
デザイン
のあてな
こんな改行だったら、どんな印象を受けるでしょう?
自分の発想力をチェック?
「こんなものがあったら良いかも♪」何かアイデアが沸いたとき、私はそれが世の中にないか毎回調べています。もちろんパクリになってしまわないかを確認するためではありますが、そこでは自分の発想力を確認する作業も兼ねています。世の中に同じことを考える人がいるかを確かめてみる。
例えば、似たようなアイデアが既に商品化されていたら、すごく簡単に捉えると自分のアイデアは商品化に至るレベルのアイデア。その中でも、有名ブランドや大手メーカーが商品化をしていたら、それは売れる見込みのあるアイデアです。自分のアイデアに自信を持ってヨシ。もし、調べてみて似たようなアイデアが無かったら、それはあなただけのオリジナリティのあるアイデア。自分の感性として大切にしていけばヨシ。結果はどちらでも、自分のアイデアの立ち位置を確認することができ、同時に足りないことを把握することができます。世の中にあったら感性やオリジナリティを磨けばいいし、無かったら世の中の需要やマーケティングを学べばいい。比較できるものばかりではありませんが、自分の今の立ち位置を知ることは大事なことだと思っています。
少ないもので大きな力を?
駅のホームで電車を待っていて、目の前にある金網が気になりました。子供の頃、足をかけて登ったりしていましたが、よく考えたら子供が登ってもちっとも歪まない金網。最小限の材料であんなに機能的で強度のあるものを作っているんだなと、勝手に関心してしまいました。
十分な材料を使って機能を満たしたり、複雑な工程を重ねて強度を保つことはできます。でもそれを、少ない材料や簡易的な方法で実現するのは難しいこと。何かを実現しようとするとき、私たちは必要なものを揃えようとします。もちろん、それらを揃えることができれば実現はしますが、それを揃えなくても実現できたら、たくさん作ることができたり、たくさんの人が利用できたりします。学生時代に北欧に一人旅をしたとき、誰もが知っているような成形合板(重ねた木材に熱を加えて曲げる加工)のチェアが公共の場にたくさん使われていて驚いたんですが、その方法が考えられた元々の発想は、少ない材料でたくさん作るため。デザインよりも前にその考え方があってのものなんですよね。もし機会があったら、今実現できていることを、もっと少ない材料や方法でできないか考えてみてはいかがでしょうか。
雨の日に使うけど、濡らしたくない?
車の月極駐車場。同じ場所でも屋根付きと屋根なしで金額は異なるようですが、不動産屋さんで働く友人によると、屋根付きを選ぶ人が圧倒的に多いそうです。車は雨の日にも使うので、雨汚れを気にしなければ濡れてもそこまで関係なさそうですが、やっぱり大切なものは少しでも大事に扱いたいのでしょうね。
仮に、水に濡らして使う物があったとします。そして、それを保管するための入れ物を考えるとしたら、「防水」という発想はなかなか出ません。濡れてもいいものなのに、濡らさないように保管する。一見、矛盾しているような感じですが、車のように、濡れてもいいからといって濡れっぱなしでよいとも限りません。それが大事なものなら尚更。汚れてもよいものだけど汚れないようにする方法、潰れてもよいものだけど潰さない方法など、そうなってもいいものに、そうならない発想を加えてみる。そうすると、ケースを入れるケースなんてものもアイデアとして出てくるかもしれません。外から中身を守るものだけど傷をつけたくない♪もし発想に悩んだら、そんな方法も考え方の1つとして使ってみてください。
良い修正とわるい修正?
グラフィックデザインやWebデザインの仕事には修正が付きもので、最初につくったデザインでそのままOKということはほとんどありません。だから、修正を依頼されたらもちろん素直に対応するんですが、その修正には、大きく良い修正とわるい修正の2種類があります。
良い修正。それは、さらに品質を向上させる修正です。「これでも良いんだけど、こうしたらもっと良くなる!」今の状態でOKでも、もっと良くなる方法を模索するような相手だと、こちらも前のめりになって向き合ってしまいます。もう1つのわるい修正は、間違いを正す修正です。「記載する情報が間違っていた」「やっぱりこうしたい!」など、そもそもの部分を行ったり来たりする。お互いに無駄な時間を使って消耗してしまうだけで、あまり生産性がありません。修正に対する文句のように聞こえるかもしれませんが、決してそうではなく、成果をあげる方向に向かいたいだけ。先日、私が過去につくったポスターの内容を変更して新たにつくる依頼があり、依頼通りに対応しましたが、どこかで「もっと良くなるための修正」を待ってしまいました。忙しそうにしている私を気遣ってくれたのだと思いますけどね。