デザインのあてな

身近なところにデザインのヒント

レシピの材料費では作れない?

 

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 ここのところお金の話が多くて恐縮です。でも、クリエイターだからといってお金のことをないがしろにして仕事ができるわけではないので、また1つ例を挙げて、注意を呼びかけてみることにしました。自分が発信する際にもあらためて注意したい内容です。

 

料理のレシピ。「材料費たったの100円で!」といった節約料理をたまに見かけます。ピーマン1個20円、卵1個10円…、たしかに材料を合計すると100円に収まります。ただ、その通りの材料費で作ることができるのは、そこにある材料を頻繁に使っている人だけ。5個入100円のピーマンと、10個入100円の卵を買ってその料理だけを作ったら、とっても高額な料理の完成。調味料は材料費に入っていないことも多いので、実際はもっと費用がかかっています。たまにしか料理を作らない人はきっと分かるはず。毎日同じ料理を作り続ければ、その通りになるかもしれませんが、そんなことはないですよね。もちろん、レシピを作った人も騙そうとしているわけでありませんし、利用者も分かった上でその材料費を見ていると思います。でも、そこに書いてある費用で実現するのは難しい。相互理解があるとはいえ、そこにとても違和感があります。

 

 

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絵本をプレゼントする?

 

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 30代になったぐらいから、一緒に働いている仲の良い同僚や後輩が新たな環境に旅立っていくときに、絵本をプレゼントするようになりました。本をプレゼントするなんて、カッコつけてる感じで少し重いプレゼントだと思っていましたが、今のところは喜んでもらえています。

 

ただ、どんな絵本にするかを毎回考えるのがとても大変で、相手が今どんなことを考えていて、どんなことに関心があって、どんなことをやりたいと思っているのか?と想像を巡らせて、調べまくって、コレ!という一冊を選びます。ただ、そもそも本を読まない人の可能性もあるので、本当に難しい。それでも、その一冊を選ぶまでにその人のことを自分なりに必死に考えるので、いつの間にかその人に好意を持てるようになっちゃうメリットがあります。「あの人がこの本を読んだら、どう感じるだろう?」「不安が少し和らぐかな?」そうやって、相手の立場になって想像するので、必然的に相手の考えを受け入れられるようになります。もうだいぶ前になりますが、プレゼントした本が、同僚の転職先の全社員に浸透したそうで、そのときは本当に嬉しかったのをよく覚えています。

 

 

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組み立てないで持っていく?

 

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 ダイニングテーブルをお客さんの家に届ける。組み立てた完成品を持っていけば設置するだけで済みますが、脚が付いた状態だとトラックの中で場所をとりますし、設置する部屋まで運べない可能性があるので、持ち込んでから組み立てて納品します。また、時間がかからないように、残りの組み立ての工程をできるだけ少なくします。家具だったら分かりやすいですよね。

 

人と時間と場所とお金を念頭に置いて、最適な方法を考える。仕事で当たり前のようにやっているはずなのに、他のことになるとその考えが抜けてしまうこともあります。例えば、自分が楽な方法を選んでしまう。テーブルでいえば、できるだけパーツをバラバラにしてコンパクトにすれば配送のコストも抑えられるし、一人でも運べるので人件費も抑えられる♪となってしまうわけです。お客さんの家で時間をかけて組み立て作業を行なったら迷惑がかかるという発想になりません。また、1人で全てやることが非効率であることにも気付かない…。人と時間と場所とお金を念頭に置いて仕事をする。「そんなこと分かってるよ!」と言われてしまうかもしれませんが、それができている人はほんのひと握りです。

 

 

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想像ではなく事実で納得?

 

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 私はプレゼンが決して得意ではないんですが、昨年ある場でプレゼンをしたとき、私の提案が多くの人に受け入れられました。その理由は、他の人たちが想像で話していたのに対して、私は事実を織り交ぜながら話したからです。

 

「こうすればきっとこう思ってもらえるので…」ではなく、「こうしたらこう思ってもらえたことが以前ありまして…」としたわけです。本当にあったことなので、プレゼンを聞いていた人は「そうなのかぁ」となりました。「…だから、私はこの提案をします!」としたデザインは、強い説得力を持っていたのだと思います。そんなふうに、最近は事実がそこに含まれていることを重視しています。全てが想像だと「それはあなたの仮説でしょう?」となってしまうからです。もちろん、事実と想像を混在させて、想像のことも事実のように伝えるのはNGですが、「ここは事実です!」と伝えるのはOK。提案相手に絶対的な信頼を勝ち取っているようであれば話は別ですが、きっとそんなことはほとんどないはず。もし自分の提案がなかなか刺さらないなと思ったら、事実を伝えることを意識してみると反応が変わるかもしれません。

 

 

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それだけを値引きできない?

 

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 毎年年末になると、正月のおせちの材料を調達しに上野のアメ横に行きます。特別安いわけでも質が高いわけでもないのかもしれませんが、家のイベント的にいつも行くんですが、その時だけ普段は全くしない値引き交渉をします。年の瀬の楽しみの1つです。

 

私がやる方法は、「コレ足したらいくらになります?」。単品では安くならないことを知っているので、追加することで値引きの余地を作ります。すると、1つ1,000円、2つでも2,000円の商品が、3つだと2,500円になったりします。100円玉を使わないようにしているので、500円の値引きが可能な数量まで増やして交渉するわけです。仕事の際、少しでも安くしてほしいと交渉する依頼主もいると思います。その時、依頼先が応じてくれないようなら、依頼を増やしてみると、検討してくれる場合もあります。逆の立場で、値引きを迫られた時は、こちらから対応することを増やして提案。それなら1つだけはじめの金額で… となるか、それもお願いします!となります。単体での値引きは難しい。それを頭に入れておくと、頼まれた場合も頼む場合も便利です。

 

 

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美味しいけど重い?

 

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 パティシエ修行中の妻に連れられて都内のケーキ屋さんによく行きます。先日はあるお店でガトーショコラを買って食べました。きっと高級であろうチョコレートを使っていてとても美味しかったんですが、3口ほど食べて手が止まりました。美味しいけど、少し重いので途中できつくなってしまったんです。

 

同じように、内容が濃かったり、少し重たい内容が続くと、途中で手が止まってしまうことがあります。例えば、説明書。読みはじめて最後まで一度も休まずに読んだ人は少ないのではないでしょうか。ちゃんと読んだ方がよいことが分かっていて、余計な内容が書かれているわけではないだけに、途中で疲れてしまいます。少し前に、Q&A形式のガイドブックのデザインをしました。説明的な表現が多く、該当していることがあったら不安になってしまうような内容。そこで私は、全体的に重くならないようにイラストを入れるなどするとともに、途中に箸休めを入れました。そうして何度か周囲の人に試し読みしてもらったところ、ストレスなく読めるように。濃い内容がギュッと詰まったものが必ずしも良い効果を与えない場合もあるかもしれません。

 

 

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仕事はどれも期限付き?

 

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 仕事はどれも期限付き。それがクリエィティブな作業であっても、途方もないボリュームで終わりが見えなくても、どこかに期限を設けてその期限までに終わらせなければいけません。もしそれができないなら、それは仕事ではなく趣味。

 

「やってみないといつ終わるか分からない」「良いアイデアがいつ思い付くか分からない」といった声を聞くことがあります。それらはいずれも仕事においては間違いだと思っています。正しくは「やってみないと分からないけど〇〇日までに完了させます」「〇〇日までに良いアイデアを考えて提案します」。アイデアが出ないときも確かにありますが、「出ない」ではなく「出す」んです。あまりこういったことを強く言うと、ブラックな印象を受ける人もいるかもしれませんが、これは大前提。だから、プロとして仕事を長く続けている人は、どうにか出す方法をいくつも持っているし、ボリュームのある仕事を終える方法も知っています。もし、先の見えない仕事を抱えて自身で期限を設けられなかったら、周囲の先輩や上司にその方法を教えてもらうのがオススメです。ちなみに余裕たっぷりで期限を設けるのは意味がありませんのでご注意を。

 

 

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きっとそれが正解?

 

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 デザイン案を複数つくると、余裕があるときには周囲の人に見せて感想を聞きます。年末につくったデザイン案を何人かに見せてみたところ、ある1つの案にほぼ全員が注目してくれました。それは自分の中でも自信のあったもの。他にも出来の良いデザインがありましたが、私はその注目してもらえた案を一押しで提案することにしました。

 

ちゃんと届いたものが“正解”。そう考えるようにしています。私がデザインを考える際は、基本的にはそれがどう伝わるかを説明ができるようにします。ただ、そうやって理屈で成立させていても、実際に伝わるかは別。それは伝わるとされている手法であっても、見せた人が無反応であればそれは伝わらないデザインだし、説明してはじめて「あ~なるほどそういうことか!」となったら、それは説明しなければ伝わらないということ。どう見ても分かりやすいストレートな表現だと自分で思っても、反応がわるかったら認識が間違っていると捉えます。1人に聞いた反応だけで判断するのは、その人の趣味嗜好もあるのでオススメしませんが、複数人が同じ反応をしたときはとても良い判断基準になります。

 

 

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やったことがなくてもできる?

 

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 私の専門はプロダクトデザインですが、仕事でグラフィックや空間デザインも行なっています。キャッチコピーや文章を考えることも。専門分野1本でやっていければ越したことはないですが、まだまだ未熟で幅広く仕事をしながら勉強中です。そんな感じである程度いろんなことをやってはいますが、私のもとにはやったことのないことばかり集まってきます(笑)

 

例えば最近だと、ある会社の社名変更に伴うサポートをしました。簡単に言うと、社名変更することによって必要になる制作物を対応してほしいという依頼内容です。封筒や名刺をつくるだけの話ではなく、必要なものをつくる。会社の入り口の看板、社用車のラッピング、顧客や取引先への案内状など、まず何が必要かを洗い出し、それをどういう内容でどうやってつくるか?を考えるわけです。案内状の文面を考え、その表現で問題ないかを弁護士さんに確認してもらう。そんなことは当然やったことがありませんが、調べて聞いてやったらできました。そんなことを長年繰り返してきたからか、やったことのないことが当たり前になりどうにかできるように…。できることだけやっていると、初めてのことに戸惑い拒否してしまうこともありますが、できないことをやっていくと、ある程度どんな初めてのことも対応できるようになる気がします。

 

 

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簡単にできて不安?

 

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 私はまわりの目を気にするタイプなので、何かをしたらつい相手の反応を伺ってしまいます。ある時、頼まれたことを5分ほどで対応して返したとき、少し不安そうな表情をしているのが気になりました。自分で言うのもなんですが、対応に不備はなかったので理由を考えました。

 

少し経ってからイベントの設営があり、伸張式のテーブルを組み立てていたんですが、組み立ての工程がやけに少なく、テーブルの脚は1本のネジだけで固定するようになっていました。私は長年家具屋に勤めていたので、それがとても効率良くきちんと組み上がる簡単な方法であることは理解できました。ただ、なぜか不安に…。それはきっと、あまりにも簡単に早くできてしまったからです。「こういうことなのかなぁ…」前述の私の対応とリンク。それが問題なくできているかどうかではなく、簡単すぎる・早すぎることが不安につながる。それ以降は、頼まれた依頼は早く戻し過ぎないようにしています。飲食店で、注文してすぐに料理が出てきて「作り置きじゃないの?」と不安になるのと同じ。早く条件を満たすことが必ずしも相手の満足につながるとは限らないのかもしれません。

 

 

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本気が見えないと向き合わない?

 

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 昨年参加させてもらったコンペの最終審査。審査を終えての総評では、年々提案力が上がっていることに触れていました。プレゼンならスライドではなく動画、デザインは印刷物ではなく模型。私は度々、そういった部分での自身の提案力の弱さを露呈しています。

 

制作ツールの進化などで誰もがやろうと思えば動画をつくったり、リアルな模型をつくることが比較的容易になりました。だから、自然とその流れになっているのだと考えそうですが、実は注目しなければいけないのはそこではありません。本気度が増しているという点です。私がいま取り組んでいる企業への提案があるんですが、当初はCG画像や説明を入れた印刷物を用意する予定でした。しかし、担当の方からそれでは話を聞いてもらえない(意味がない)と指摘を受け、リアルな模型とともに提案することに。相手がイメージしやすいようにという目的もありますが、「これぐらい本気です」を伝えるためです。相手もデザインに携わっているのでCGや図面を見れば具体的に想像はできます。提案は、提案内容が分かればいいわけではない。そこに熱意や力の入れ具合が含まれていないといけないんです。

 

 

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代行では成り立たなくなる?

 

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 私はデザインを依頼された際、「依頼してくれた人が出せない答え」を意識して取り組んでいます。独自に探したり、他の人に聞いたりしても出ない答え。もちろん仕事内容にもよりますが、ある程度委ねていただく仕事では特に意識しています。

 

はじめて独立したとき、私はたった2年で続けられない状態になり、再び会社員として働きはじめました。理由はいろいろありますが、その中の1つが、“代行”をしていたからです。誰かが出来ることを代わりにやる。どんな仕事でもいいからと躍起になって引き受けたものは、どれも他の人でも同じように出来ることでした。例えば、分からないことがあったらパソコンやスマホですぐに調べられます。それを仕事にするには、自分で調べるより早く答えがもらえる、調べるのが面倒なことを代行する、調べ方が分からないことを代わりに調べるといった手段があります。ただ、それは他の誰かも出来るし、どんどん便利になって、よりスピーディーに、より安くしないと代行では成り立たなくなります。その結果、私は一度失敗しました。私たちが提供しなければいけないのは調べても分からない答え。周囲に代行で成り立っている仕事がもしあるとしたら、きっとそれは代行だけをやっているわけではないはずです。

 

 

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ダサいスタイリストは不安?

 

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 昨年からほんの少しですが、ファッションや持つものをオシャレにするよう心掛けています。実際に出来ているかは何とも言えませんが、ごくたまに触れていただけるので、やってみてよかったなと思っています。得意ではないんですが、今年も続けてみるつもりです。

 

私はデザインという仕事柄、「感度が高い」「センスがある」「流行に敏感」と行った印象を与えないといけないと思っています。何度も仕事をしているよく知っている人なら別ですが、初めて会う人はその辺りを気にして見ているからです。実際、一昨年は、仕事を終えた後に「初めてお会いしたときはちょっと不安でした…」なんて言われたりも。それ以降、半ば無理をしてちょっと流行っている服を買ったりして、「俺、何してんだろ」と思いつつ続けた結果、以前よりも初めからある程度信頼してもらえるようになった気がします。オシャレなポスターをデザインしてほしい!と思っているのに、お願いする人がオシャレなファッションや装備でなかったら、不安になるのは当然のこと。恥ずかしながら、40間近になって気づくことができました。尖った服だったら個性が強そうだし、ハイセンス過ぎたらノーマルなデザインができなそう…。難しいところですが、今年も気にしていこうと思います。

 

 

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変わってないのに同じ金額?

 

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 数年前に10万円で購入したテレビ。今、まったく同じテレビを10万円で購入しようとは思いません。同じ金額でもっと良いものが買えるようになっているからです。当時10万円で求めていた対価と、今10万円で求める対価はちがいます。

 

仕事も同じで、数年前に受けていた仕事を今も同じ金額で受けることはできません。その金額でできることが変化しているから。今では簡単なホームページなら誰でもつくることができるし、グラフィックソフトを使ってパソコンでデザインをつくることができます。だから、ホームページやデザインをつくることの価値は低下しているということです。そんな当たり前のようなことでも、その価値の低下に気づいていない場合もあります。それは、やり方をずっと変えていない場合。数年前と同じことをするのに同じ金額を提示したりしてしまうわけです。世の中には、変わらないことが価値となっているものもたくさんあります。だから、変えないように意識し続けることも重要です。ただ、意識してなくて変わっていないのはちょっと考えもの。それに気付かずに同じままだと、仕事がどんどん減ってしまうかもしれません。

 

 

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