デザインのあてな

身近なところにデザインのヒント

実際に使ったことがない?

 

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 目の前の課題に取り組むときに、なかなか思考が展開しなかったり、的はずれなアイデアになってしまうことがあります。個々の技量の問題かもしれませんが、私の経験上、そもそもその課題となっている商品やサービスをあまり利用しない、もしくは使ったことがない、というケースが結構な割合でありました。

 

例えば、ショッピングサイトを使いやすくするためのアイデアを考える。それなのに「私は実際にモノを見て購入するタイプなので、オンラインでは購入したことがありません」と平然と語る人がいます。ちなみに若い頃の私がそれです。先輩から、「何でもいいから実際に購入してみなさい!」と指導されて渋々購入してみると、当たり前ですが、想像では発見できない気になるポイントがいくつも見つかりました。(本当な実際に見直すサイトで購入すればよかったのですが、自腹を切って試すにはあまりに高額だったので先輩が似たサイトでよいと言ってくれました。)広告を作るのに、その商品を直に見たこともない。魅力を伝える仕事なのに、行ったこともない。情報を調べて分かったような気になってしまうと、その人だからこそ見つけられるモノが本当はあっても見つけられないかもしれません。

 

 

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Excelでポスターをつくる?

 

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 PowerpointIllustratorなどのソフト。自由に描写ができるのでとても便利で、使い慣れてある程度自由がきくようになると、何となくキレイに出来た気になって本質的なところがおざなりになってしまうことがあります。考えはじめる際に、いきなりパソコンでソフトを開く人は要注意。

 

学生時代にみんなが使いはじめた頃のとある授業で、OfficeのExcelでポスターを作成するという課題がありました。加工が出来ないなど、これまで自由に出来たことの様々な部分に制限がかかるわけです。みんなが四苦八苦して作成したそれらは、どれも“それっぽく”化粧したものばかり。制作環境に不満を漏らす生徒もいましたが、そこで先生が出したあるグラフィックデザイナーのポスターでぐうの音も出なくなりました。しっかりとメッセージが伝わる美しいポスターだったからです。続けて、「優れたデザイナーは、Excelでも十分に素晴らしいポスターが作れる」と。この授業は、私にとって考え方の基本となった岐路です。装飾をしたり、テクニックを使ったり、他の何かで補ってしまうと、本当に伝えるべきところが多少おろそかでも成立しているように錯覚する落とし穴があります。

 

 

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相手のアイデアが広がる?

 

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 私は提案をする際、わざと一例として提示することがあります。これしかあり得ない!と示さずに、企画内容を具体的に実行する例を1つ挙げるわけです。もちろん内容によりますが、そうすることで「じゃあ他に何があるの?」と興味を持ってもらったり、「それならこういう方法もあるね!」と意見を引き出したりできるからです。

 

相手を納得させなければ…と意気込んでしまいがちですが、それよりも大事なのは、相手に前のめりになってもらうこと。もっというと参加してもらうぐらいが良いと思っています。余白を持って提案にのぞむんです。ただ一例と言っても、それは自身のベストの具体策でなければいけません。それを一例として、二例目、三例目をこっそり用意しておくんです。そうすることで、「じゃあ他に何があるの?」にスムーズに返答できますし、相手の人が出してくれた別案にもリアクションできる。そうしていくうちに、いつの間にか相手の人にとっての提案にもなっていて、真剣に向き合ってくれるようになります。隙のない完璧な案を示すのも大事なことですが、一緒に考えてもらう・一緒に考えたくなるようにするのも時には大事なことだと考えています。

 

 

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本のタイトルに習う?

 

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 つい忘れてしまいがちなのが、商品にしても広告にしても、数多あるモノの中に並ぶという点です。そこに意識が向いていないと、残念なことにどんなに素晴らしいモノでも埋もれてしまう場合もあります。そこで、埋もれない目を引く工夫が求められるわけです。

 

様々なテクニックがあると思いますが、とても簡単な方法を1つ。それは、本のタイトルからヒントを得る方法です。隣同士に競合商品が並ぶ本屋さんでは、手に取ってもらうために本の装丁やタイトルで目を引かなければなりません。そのため、特に平積みされるような本は、徹底的に考え抜かれたタイトルになっています。例えば、「30歳までに身に付けておきたい〇〇」は、20代後半~30代前半の人が気になります。30代後半・40代の人が「どれどれ(笑)」と上から目線で見たり、意識の高い学生が手に取るかもしれません。広いターゲットに注目してもらうために、あえて「30歳までに~」と具体的な数字でフックを作っていると捉えることができます。他にも「~しなくていい」や「3つの〇〇」なども同様。そのまま利用したらパクリになってしまいますが、考え方や狙いを別の何かに置き換えてアイデアを練ると、今まで見つけられなかった工夫に辿りつくことがあります。

 

 

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家族が喜ぶプレゼント?

 

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 社会問題を解決する〇〇…。そんな難しいことは一筋縄では考えらません。でも、自分の住んでいる町の人たちを、働いている会社を、家族を、と対象を狭めていけば考えやすくなっていきます。親友が喜んでくれそうなプレゼントだったら、考えやすいですよね。

 

(他人のことは言えませんが…)考えるのが苦手な人は、いきなり難しいところから入ろうとしている傾向があります。豊富な知識と経験を兼ね備えた人ならそれができるかもしれませんが、ほとんどの人は難しい。けれど、前述のように親友が喜ぶプレゼントなら考えられます。しかも、それは喜んでくれる確率がとても高い素晴らしいアイデア。今回オススメしたいのは、その対象を少しずつ広げていくという方法です。お母さんが喜ぶプレゼントなら、それをお母さんもお父さんも喜ぶモノに、家族みんなが喜ぶモノにしていく。そうすると、共通する何かが見い出せたり、どうして上手く考えられないかが分かったりします。あとはその応用。いきなり考えたアイデアでは辿り着けない、自分が考えやすいところまで一度対象を狭めて、そこからあらためて広げていくことで見つかるアイデアもあります。

 

 

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機能に機能を加えない?

 

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 魅力的なモノにさらに魅力を加えれば、より魅力的になる。そういった考えも確かにあります。豪華絢爛な空間は魅力的ですし、ブルーレイレコーダーや十徳ナイフのように機能に機能をプラスした商品もたくさんある。しかし、逆に魅力が半減したり、機能性が落ちてしまうこともあります。

 

掛け合わせるのは、違うこと。特に新しい視点や解決策を考えたり、そこに強いメッセージを込める場合、同じものを掛け合わせても相乗効果を生み出すことは難しいと考えています。考えるべきは、機能+機能ではなく、機能+(別の何か)です。例をあげると、「場所」や「人」や「時間」、最近よく言われる要素は「体験」です。家の中で水を飲むならコップで十分ですが、持ち歩く(場所)となったら水筒、口紅が付かないように(人)となったらストロー、非常時(時間)となったら常備するためのペットボトルなどに変わります。それが私の考えるデザイン。多機能を否定するわけでは決してありませんが、それは技術的ないわゆる開発の分野であることが多いんですよね。「メガネにスマホの機能を…」みたいな発想はおもしろいんですが、私たちがやるべきところはそこではないというのが私の考えです。

 

 

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「あった方がいい」は使わない?

 

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「あった方がいい」は無くてもいい。それは、学生時代に口酸っぱく教えられたことです。提案する際につい使ってしまいがちな「あった方が良いと思うんです」といった表現。「…ってことは無くてもいいんですね?」と意地悪な返しをされてしまうんですが、悔しいけれどその通り。断言できないのは、絶対に必要だとまで言える自信がないからです。

 

とはいえ、自信を持って強いメンタルで提案しなさい!と言われても、なかなかできることではありません。私も同様ですが、そんなタイプの人には、「こうあるべきです!」と半ば強制的に言うことをオススメしています。自身が無くても断言する。結局、いろいろと穴を指摘されてしまうわけですが、それが次の提案に生きてきますし、何より断言することで自ずと提案のクオリティーが上がります。「強く言うからには、もうちょっと見直さないとなぁ…」みたいな意識がはたらく。それを繰り返しているうちに、無理やり使っていた「あるべき!」が、いつの間にか気持ちのこもった「あるべき!」に変わっています。気持ちの問題ではあるんですが、なかなか自信を持てない人は騙されたと思って試してみてください!

 

 

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あのとき私はこうしたい?

 

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 身の回りにはたくさんの便利なモノが溢れ、新しい切り口でデザインを考えようとしても既に在る場合がほとんど…。いざ考えようとしても、既存のモノをより良くする方法など、何かの派生になってしまうことがよくあります。

 

切り口を変えてと言われても、なかなかアイデアが考えられない。そんなときは、自身が体験したシーンを思い浮かべたり、想像したりしてみてはいかがでしょう。「あのとき不便を感じたな~」「別にできないことはないけどちょっとストレス…」「こういうときに限って〇〇」など、シーンを頭に描くわけです。すると、そこに最適なモノやサービスがよく考えてみると無かったりする。それが、アイデアの糸口になります。もし、それを解決できる何かをカタチにできたら、それはきっと新しいアイデア。これだけ便利な世の中で適した何かが見つからないのは、まだ誰もそこに注目できていないことである可能性が大きいということです。シーンを想像するのが難しかったら、実際の体験を思い出すだけでOK。同じような体験をした人が必ずいるので、その体験を生かしたモノを考えられたら、他の似た経験をした人の力になれるかもしれません。

 

 

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これしか使えない?

 

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 デザインの自由度が高いほどおもしろいのは確かですが、その分難易度は上がります。難しいのは条件がないから。条件がたくさんあると一見考えづらそうですが、実はその方が考えうやすい。「自由に考えてください!」と投げかけられると、思考が停止してしまうそうになります。

 

私がたまに選ぶ方法は、制限すること。アイデアが広がらなかったり、思考が停滞してきたら、さらに自分で勝手に条件を付け加えるんです。例えば、10万円の予算があっても「1万円しか使えない!」という条件をつける。実施日はこれから設定するのだとしても「明日実施することになった!」とする。そうやって条件を厳しくすると、嫌でもアイデアが出てきます。少し条件が厳しくなる程度だと、使うものを節約したり、規模を縮小したりしてしまうので、できれば無謀な条件がオススメ。「(そんなこと言われても無理だよ…)」というぐらいの条件を突きつけられると、職人気質であればあるほど燃えます!その熱は、経験上良い結果を生みます。条件は自分で設定するのもアリですが、都合の良い条件をつけてしまいそうだったら、周囲の誰かに設定してもらうのもよいかもしれません。

 

 

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そうした理由を10個出す?

 

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 過去の行動をちょっと踏み込んで分析すると、思わぬ発見があります。その発見は周囲があまり注目していない場合が結構あって、あくまで私の経験上の話ですが、オリジナルのアイデアづくりに役立ったりします。

 

さっきコンビニでペットボトルのお茶を買った理由を考える。「通り道だったから」「安いから」とすぐにいくつか出てきます。そこから新たに理由を10個出すとなると、「種類が多いから」「キャッシュレス決済ができるから」といった少し細かいものが出てきて、さらに10個出すとなると、「そのコンビニが好きだから」「暑かったから涼みに…」と普通には出てこないものが現れます。これを繰り返して、どこまでも続けるわけですが、例えばポロっと出てきた「そのコンビニが好き」という理由は、実は結構重要なポイントだったりするんですよね。利便性以外の要素が関わっていることが想像できる。そんなふうに小さな発見があったら、それを自分なりに分析してみることで今まで考えなかったようなアイデアが生まれます。他の人がやらない方法を使えば、他の人が出せないアイデアにたどり着くかもしれません。

 

 

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別のときに考えたことに注目?

 

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 目の前のテーマについて考えていると、そのテーマに基づいたことや、その派生のことにしか思考が発展しないときがあります。何か新しいモノと掛け合わせたり、切り口を変えようとしても、漠然としすぎていてなかなか難しいもの。連想ゲームになってしまって悶々とすることも…。そして、それは大抵の場合すでに世の中にあります。

 

そこでオススメなのは、今回のテーマとは別のときに考えたことを引っ張り出す方法です。全然ちがうことについて考えたキーワードやアイデアなので、今回のテーマの延長上にはありません。それを結び付けてみるわけです。もちろん、直接的にうまく掛け合わさってアイデアになることはほとんどありませんが、新しい切り口になることがあります。これも前回の記事と同様で、日頃からいろんなテーマについてアイデアを出して貯めておくことが必要ですが、その時に採用されなくても「いつか採用される(かもしれない)アイデア」になります。掛け合わせるのは、別のときに考えたアイデア。私もそうですが、視点を変えた新しい試みを模索している場合は、ぜひお試しください!

 

 

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URLを入力してない?

 

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「当たり前を疑いなさい!」と言われても、自分がやっているのは当たり前になっていることなので、どこから疑えばよいか分かりません。いろいろ頭で考えて、「あれはよく考えたらおかしいのでは?」と浮かぶ人はきっと少ない。だから、私の場合は手当たり次第にチェックします。

 

例えば、チラシを作っているとき。ひと通りつくったあと、これはおかしいものだと仮定して見直します。どうして四隅にロゴを置くのか?どうして簡潔にまとめているのか?なんで説明するのか?そもそもこれは目的を果たすことができるのか?等々、何から何まで疑うわけです。疑ってかかっても、おかしい理由が見つからないことがほとんどですが、それでも1つや2つは必ず見つかる。「必ず載せているWebサイトのURL。見ながら直接入力している人なんて自分を含めて見たことない…」それなら、サービス名で検索してもらうかQRコードさえあればいいとなるわけです(実際は直接入力する人も少なからずいて、co.jpなどを示すことで信頼を得るなどの意味があるかも…)。当たり前を疑う練習を日頃からすると、その時は役に立たなくても、モノの見方の引き出しが増えて考えに幅ができるかもしれません。

 

 

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どんな経験も最強の武器?

 

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 私には他のデザイナーさんたちが持っていない武器があります。それは、私だけの経験。デパートの屋上で着ぐるみを着るバイトをしたことがあって、何年も飲食店で働いて調理師免許を取ったデザイナーはそうはいないはずです。それはちょっと極端ですが、どんなに些細な経験でも他の人が経験していない以上は、その人だけの武器になります。

 

以前、上司の意見でいつもねじ伏せられるという相談を受けたことがありました。裏付けもしっかりしていて非の打ち所がない意見だけど、何か物足りない…。けれど、その意見に何も言えることがない、という相談です。その時も私は「えっ、〇〇さんしか分からないことたくさんあるじゃないですか♪」と。具体的なところは細かくなってしまうので端折りますが、簡単に言うと現場経験のない上司には、現場でバリバリやってきた〇〇さんの生の感覚は分からないというアドバイスです。実際、上司の意見は素晴らしいものの現場で上手く運用されない問題があったものが、〇〇さんの意見が加わったことで回り出したそう。どんなに頭の良い人で経験がなしに想像ができるとしても、それでも経験者には絶対に敵いません。少なくとも私はその経験で今がある。あなただけの経験を生かしたものを考えるのも1つの方法です。

 

 

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身近な人の観察結果?

 

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 地元の友達の半数以上はSNSをやっていません。だからといって何1つ不自由していないし、むしろ私なんかより最先端の情報をたくさん持っています(困ったらよく教えてもらっています)。フォロワーなんて一人もいなくても、びっくりするぐらい知り合いが多いやつもいる。そんな感じ。

 

例えば、紙の広告媒体で情報発信する。そう聞いたら、その方法は古いと思う人もいるのではないでしょうか?確かに、ネット広告などの方が時代に合っているし、たくさんの人に届けられそうです。でも、仮にSNSの広告を選んだ場合、少なくとも私の友達には届きません。twitterの日本の利用者は4,500万人?Instagramは3,000万人?facebookは2,500万人?...。ほとんどの人がやっているように見えるものも、冷静に見れば残りの人はやってわけです。マーケティングなどの小難しいことは置いておいて、私は身近にいる人をよ~く観察することをとても大事にしていて、実際にその観察結果がとても役立っています。40代男性の消費傾向をネット検索で調べるぐらいなら、その辺のお店で観察した方が鮮度のある結果が得られる。それが偏った結果だったとしても、自身の目で確認した情報の強さは、ネット検索の比ではありません。

 

 

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