デザインのあてな

身近なところにデザインのヒント

一流のお店は気取っていない?

 

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 私の妻はパティシエ修行中なので、どこかに出掛ける度にそこで出会った洋菓子店に立ち寄っていくつかお菓子を購入しています。先日はマカロンで有名なピエール・エルメ・パリに立ち寄り、半分勉強も兼ねて2~3個買っていました。知っている人は分かると思いますが、一流の洋菓子店です。

 

私が感動したのは、店員さんの接客。ショーケースの前でどれにしようか迷っている妻に、スーツを着た店員さんは急かす様子も一切出さず、1つ1つ味や素材を丁寧に説明していました。限定のパッケージ描かれていたイラストを見た妻が、「あっこれ、エルメのレシピ本と同じイラストレーターさんの絵ですよね?」と尋ねると、「エルメさんが東京に遊びに来たときに思い出に残ったスポットをイラストにしてもらったんですよ♪ほら、これは秋葉原の…」今回の限定パッケージ採用された経緯を楽しそうに話してくれていて、15分くらいのそのやりとりを遠目で見ていてとても好感が持てました。この洋菓子店に限らず、私が接してきた一流と呼ばれるお店や人は、変に気取っていないんですよね。だからか、最近では気取っている人に会うと「この人は一流ではないんだな」と思ってしまうようになりました。

 

 

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説明が長いデザインはボツ?

 

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 私はここ数年、デザインの公募コンペティションに積極的に参加しています。若者たちに向けたものもあるので、いい歳をして参加するなんて…と言われることもありますが、仕事とは別にデザイン活動をするのはとても良い勉強になるので、この記事を書いている今も締切目前の課題に取り組んでいます。

 

コンペでは、プレゼンシートを作ることが多いんですが、自身のアイデアやデザインを表現していると当たり前のことにあらためて気付かされます。「ちゃんと分かってもらおうとすると文章が長くなっちゃう…」「あんまり説明する必要ないな♪」プレゼンシートに説明文を入れていると、そのいずれかのパターンになる。言うまでもなく、前者はダメなアイデアで、(自分で言うのもあれですが)後者は良いアイデアです。長々と説明しなければいけないのは、コンセプトが曖昧で、仮に良いアイデアであってもデザインで表現しきれていないということ。優れたデザインは、長い説明が不要だったりします。自分の中で、長い説明が必要になった提案は、案の定ボツだったりするんですよね。端的な説明で済むか?自身のデザインをチェックする際の1つの指標としていかがでしょうか。

 

 

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人を集めるのは極めて難しい?

 

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 最近は、スケジュールの合間を縫って、いろんなイベント等に参加するようにしています。自宅でゆっくり休むのも1つですが、外に出て遊んだ方が精神的な疲れが取れて、カラダは疲労しているはずなのに不思議と元気な今日この頃です。

 

私が参加しているのはどれもそこそこ人気のイベントだったりするんですが、チケットが取れない、一杯で入れないといったことがあまりありません。テレビで引っ張りだこの人気芸人さんのライブも当日券が販売されていたし、CMで話題になっているエンターテインメント施設も並ばずに入れました。夏休み前ではありましたが、土日や夜のイベントでさえその感じで、人を集めるのがいかに難しいかをあらためて感じさせられました。出演者自らSNSでイベントへの来場を呼びかけ、その事務所に所属する他のアーティストも自分たちのイベントで告知し、ファンも情報を拡散している…。それでも会場を埋めることができないわけです。知名度の高い人気のある人たちがそこまでやってどうにか集めているのを目の当たりにすると、自分たちが何かのイベントで人を集めようとする時は、それ以上のことをしないといけないことが容易に想像できます。

 

 

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相反することを成立させる?

 

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 私は広告物をデザインする機会もあるんですが、未だに難しいと感じることが多々あります。その理由は、「広告は自分たちのことを自慢するモノ。ただ、自慢する人は嫌われる。広告は自慢をしてさらに好きになってもらわなければならない。そこがクリエイターの腕の見せ所。」だからです。(先日参加したコンペの審査員の言葉を拝借)

 

優れた広告は、その相反するところを成立させています。ユーモアを取り入れたり、視点を変えたアプローチをするのは、ただの自慢で終わらせないため。単におもしろい表現をしているわけではありません。一方で、あまり効果を発揮しない広告を見てみると、丁寧に自慢をしているだけだったり、自慢を控えたモノだったりします。ユーモアはあっても、その先のアクションにつながらないモノもしばしば。また、きちんと自慢をしていても「お願いします!買ってください!」といったストレートな表現すぎて避けられてしまう例もあります。ちゃんと自慢をして、さらに好きになってもらう。それを意識するだけで、今までと少しちがう表現に変わるかもしれません。それが分かっていても難しいんですけどね。

 

 

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ちゃんと買える価格設定?

 

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 先日、あるアーティストのライブに行きました。ライブ自体が数年ぶりで、公演以外にも最近の来場者や会場がどんな感じなのか気になって見ていると、目に止まったのはグッズ販売のコーナー。「あれ?値段安くない?」ツアーTシャツが2,200円、キャップが1,500円…。私の記憶にあるグッズの相場よりもだいぶ安く設定されていました。

 

ファンが若年層だから安く設定しているのだとは思いますが、それでも私の知っているライブのグッズ相場とはだいぶイメージが違っていました。「買いやすい♪」お母さんと一緒に来ていた小学生ぐらいの女の子が、小さいお財布から小銭を出してリストバンドを買っている姿は、見ていてなんだかほっこりしました。また、グッズのデザインも普段使いできるような落ち着いたデザインで、そのあたりも昔とだいぶ変わっているように思います。ちゃんと買えて使いやすい。売上が見込めるツアーグッズでさえ、そうやってさらに買いやすくする工夫を重ねているのですから、「コレはこの値段でこういうデザインのものだから」とこれまでの常識を変えないままでいると、時代に取り残されてしまうかもしれません。

 

 

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ビギナーズラックの正体?

 

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 最近は、学生さんたちの素晴らしい作品をよく目にします。ただ、世間から評価を受けているそういった作品に対して、ビギナーズラックだと揶揄する人もいますが、仮にそれらをビギナーズラックとするならば、そこにはプロには真似できないとてつもないパワーがあると思っています。

 

何かのデザインを考える際、例えば私なら、いろんな可能性を模索します。その上で、一番良いと思うところを掘り下げてアイデアを練っていくわけです。しかし、学生さんは、良い意味でやみくもに探して、自分が良いと感じたものを一気に掘り下げて進むパワーを持っています。もちろん、全員が全員そうしているわけではありません。ただ、ココ!と決めたことをひたすら磨き上げようとするのと、ベストなところを探しに探してそこから磨きはじめるのでは、仮に全く同じアイデアの場合、到達できるポイントに差が出てしまいます。決め込んで突き進んだアイデアがバッチリ当てはまったとき、それがビギナーズラックになる。プロの求められるのは、他の可能性も十二分に検討した必ず当たるアイデアを考えて、さらに他の人たちの到達点よりも深くまで掘り下げて表現することなのかもしれません。

 

 

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現状に満足してる?

 

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 詳しくは端折りますが、ある調査では、日本の現状に満足している若者が7割いる

という結果が出たそうです。それが良いわるいというわけではないんですが、ことクリエイティブに携わっている・携わっていこうとしている人だったら、不満を持つまではいかなくても、現状に疑問を持ったり、より良い姿を自分なりに考えていかなければとあらためて思いました。

 

最近、エシカル(倫理的)という言葉がよく使われます。難しい言葉ですが、言い換えると、「良識的・社会的な模範」といったところ。デザインでも強く意識されるようになっていますが、エシカルには「豊かな」という意味も含まれているとある人から聞きました。豊かな生活とは何か?を考えることが求められているわけです。だから、普段から世の中を見つめ直したり、豊かさについて考える必要が少なからずあります。現状に満足して暮らしていると、いざエシカルなアイデアを考えようと思っても、それはきっと難しい…。豊かだと思っている人にとって、豊かにするアイデアは考えづらいはずです。日本はある側面では豊かな国ですし、大きな不満を持つことは少ない環境ではありますが、だからこそ考えていく価値があるのではと思っています。

 

 

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現場で困った経験が活きる?

 

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 イベントのブースデザインや展示レイアウトを考える仕事の際、私は可能な限り設営と撤収に参加するようにしています。人手不足のサポートだったり、きちんと最後まで責任を持ってやりたいからではありますが、現場に立ち会うことがとても勉強になるからでもあります。

 

現場では、図面と寸法が違っていて予定していたものが収まらない、事前の情報と形状が異なっていて変更を余儀なくされる、などが多々あります。それを現場でどうにか考えて、きちんと完成させるまで対応する。その経験の蓄積が、トラブルまで想定した精度の高い次のデザインに着実につながっていきます。この“現場に出向く”は、なにも空間デザインだけの話ではありません。プロダクトデザインならその商品が販売されているお店に行ったり、本の装丁をデザインすれば本屋さんに行きます。いずれも、現場で分かることが多いからです。オフィスにこもって作業をしているイメージもあるかもしれませんが、私の好きなデザイナーさんたちは日中はほとんど現場を回っている人ばかり。たまにはオフィスを出て、自分が携わったモノのある現場に出向いてみてはいかがでしょうか。

 

 

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会いたい人から会いに行く?

 

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「うちはこんなことやってるんで、よかったら会社に遊びにきてください!」普通に聞いていると親近感のある呼びかけに感じますが、ちょっと言い換えると「うちのサービスについて詳しいことを知りたい場合は、そちらから出向いてください!」となります。

 

先日、冒頭のフレーズに対してツッコミを入れている記事を読んで、少し考えさせられました。やっていることは、自分から営業電話をしておいて不在だからと相手に折り返しの連絡を求める行為とあまり変わらないからです。言い回しを変えるだけで、失礼な行為が親切な行為に聞こえてしまう。注意深く見なければ、冒頭のフレースを聞き流してしまう人も多いのではないでしょうか。少し前から気になって、街中の同じような文章を見てみると、中にはこれは良くないなと思う表現が多々見つかりました。きっと、どれも良かれと思って使っている表現。ただ、それが相手を侮辱するような表現だったり、マナー違反であったり、不安を煽るよな表現だったり…。丁寧な言い方や柔らかい表現を用いても、本質は同じことを言っている。私も注意しようと気が引き締まりました。

 

 

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計算してハズしても微妙?

 

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 競争を勝ち抜くために、ある程度目立つ必要があります。時には周囲とは違ったことをやる必要もある。それは概ね正しい判断だと思っています。ただ、あくまで私の偏見と経験での話ですが、計算して外したソレにはあまり魅力がありません。

 

理由は、わざと別の方向を向いているのが見て分かるから。内容よりも先に、狙って本筋から外していることの方に目がいってしまうからです。「おもしろいと思ってもらいたいのかぁ…」「わざと風変わりな表現をしているな…」本来目指すべきところが分かっていながら、別の方向に向かって進んでいると、外し方にばかり注力してしまい、目的を見失ってしまうことがよくあります。だから、魅力がないとは言わないまでも、魅力が薄いものになってしまう。奇をてらっているように見えるモノや意表をついているように感じるモノが世の中で評価されているのは、作者がそれが一番良い表現だと思ってやっているからです。あえてそこを行っているわけではありません。自分が一番良いと思った表現。「でも、これだと他とカブるから…」なんて思わずに、そこで勝負するようにするだけで少し結果が変わるかもしれません。

 

 

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冷たそうで冷たい?

 

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 昨日、自販機で缶コーヒーを買いました。「つめた~い」を押して出てきたのは、ホットの缶コーヒー。冷たいと思って手に取ったので、あっち!とビックリしました。これが冷たいコーヒーだったら、当たり前ですが何も感じません。

 

自販機の話はさておき、相手の心を動かすには、予想されていることと違う結果を示すなど、良い意味で期待を裏切ることも必要だと思っています。「1案作って持ってきて」と伝えて、1案持っていったら普通に受け取りますが、2案持ってきたら「おっ」と思うし、10案持ってきたら「エッ!!」となる。「指示通りの案を作ってきて」と伝えて、指示通りの案を持ってきたら同様に普通に受け取りますが、指示通り案に加えて自身の考えで作った案を持ってきたら心が動かされます。私たちは、自分のアクションに対するリアクションをある程度の範囲で常に予想しています。だから、その範疇のリアクションをしても響きません。相手がどこまで予想しているかなんて考えて行動する必要はないと思っていますが、もし相手の気持ちを強く動かしたい!と思ったら、大きく期待を裏切ってみてはいかがでしょう。良い意味で。

 

 

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やってないことは求められない?

 

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 これまでの手段を疑い、再構築して新たな方法を考える。他人よりも一歩二歩先を見て、これからの世の中に必要な物事を提案するのが、クリエイティブの仕事に携わっている人の役割。最近は、そう主張する人に会うことが多くなりました。

 

「そうは言っても、そんな提案をできるのは一部のトップクリエイターだけでしょ?」と言いたくなる気持ちは分からなくもありません。私もつい最近までは同じように思っていました。でも、その主張をする人たちに会うたびに思うのは、共通して新しいことに普段から挑戦しているということ。だから、そういう仕事が回ってきます。自分にはそういったことを求められないと嘆いている人は、普段から挑戦していないのでそれを求められません。周囲の人が、より良いものを考えてくれる人だと知らないわけです。これは、下請けの多い会社にいても、フリーランスとして仕事をしていても変わらないと思っています。言われたことをやりつつ、別のところでチャレンジしている人もたくさんいます。日頃チャレンジしてない人には、チャレンジできる機会は回ってこない。今それができている人たちも、はじめからそうだったわけではないはずです。

 

 

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同じ服を着る基準?

 

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 突然ですが、私はカップルや夫婦で同じ服を着るのは、ちょっと恥ずかしいと思っています。いわゆるペアルック。ただそんな私でもスポーツ観戦やイベントなど、同じユニフォームを着る機会もあります。恥ずかしいと言いながら、それはOKということです。

 

ペアルックの外国人観光客や女の子二人組はよく見かけます。日本人でも子供と同じTシャツを着た親子はいたり、アクセントカラーをお揃いにした夫婦もいる。男同士で同じ服を着てることも。そういったことから、同じ服を着る基準がどこにあるか?と考えてみると、例えば、周囲に対して自分たちが主張したいときに着ているという分析ができます。着ないときは主張したくないとき。また別の視点からは、“個”が薄まるから同じ服を着ると考えることもできます。自分だけに注目が集まらずにグループ全体として見られるから安心できるのかもしれませんね。こんな感じで、普段スルーしている“どうでもいいこと”に注目して理由を推測してみると、普段のクリエイティブワークにも使える良いトレーニングになります。遊び半分で鍛えられるので、座学が苦手な人にはオススメです。

 

 

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詳しい人も楽しい?

 

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 私ごとで恐縮ですが、第67回朝日広告賞に応募した作品が小型広告賞に選ばれました!企業から与えられた課題に対して、新聞広告を提案する一般公募の部。私が応募したのは、JRA 日本中央競馬会の課題で「競馬の楽しみ方を未経験者に伝える広告」です。

 

“競馬に興味のない人を「おっ、何?」と引き付けるし、競馬が好きな人はこれを見てニヤニヤwww”(一部省略)と、先日のツイートに対してコメントをいただきました。私が目指したのはまさにそこで、未経験者に向けた広告ですが、詳しい人が楽しめることをベースに考えました。玄人が面白いと思えないものは、素人が見ても面白くないと考えているからです。もちろん対象によって異なりますが、例えば、私は子供の頃、大人たちが美味しそうに食べているものや、楽しそうにやっていることに興味を持ちました。珍味やお酒、タバコ、パチンコなどなど。どれも、子供に分かりやすいように説明したり、魅力を語ったりはしていません。興味のない人に興味を持ってもらう方法を考える機会は結構多いと思うので、そこに詳しい人も興味を持てるポイントを作ってみてはいかがでしょうか。あくまで方法の1つですけどね。

 

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