デザインのあてな

身近なところにデザインのヒント

両端を結ぶ?

 

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 誰かに向けてデザインする。それが、具体的な人物像を思い浮かべられるぐらいまで決まっていたら、その人に向けて考えればよいのですが、ほとんどの場合は対象とする人の中に幅があります。「30歳の働く女性」と定めていても、生活環境も趣味嗜好も人それぞれ…。

 

その幅の中で、特定の誰かをイメージして考えてもよいのですが、考えにくい場合は、その中の際立った特徴の2人ぐらいをピックアップして、その2人に向けて考えてみるのがオススメです。例えば、「30歳の働く女性」がスーパーに買い物に行くとき。自転車でスーパーをハシゴしてこまめに買い物に行く人と、車で大型スーパーに行って一週間分まとめ買いする人。その2人に共通するところを探していくという考え方です。全くちがう行動を取っているように見えて、実は同じ目的や価値観があったりして、「30歳の働く女性」に向けて考える核となるポイントになるわけです。あまりやりすぎると平滑化しすぎて特徴が薄れてしまいますが、新しい視点や共通項を発見するには良い方法だと思います。考える内容によっては、1人に向けて考えるよりも、2人に向けて考えた方がアイデアが出やすい場合もあります。

 

 

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「分かった」よりも「知りたい」?

 

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 自分が発信する情報に反応してもらいたい。例えば、広告などで商品を訴求するときに、商品の魅力を伝えようとします。それは決して間違いではありませんが、求めている結果がリアクションなら、少し考え方を広げた方がいいかもしれません。

 

簡潔に強く商品の魅力が伝わる広告があったとします。それは、情報を整理されていて、多くの人が目に止めるデザイン。ただ私は、「そういう商品があるんですね。分かりました。」という反応をすることが多いんですよね。私がひねくれている面も否めないのですが、実際のところ、同じような反応をする人もいるのではないでしょうか。一方で、興味をそそられてしまう広告は、「えっ何?何?」と、もっと詳しく知りたいという気持ちにされられてしまいます。いわゆる上手い広告です。街を歩けば、同じようなデザインでも機能が全く異なる広告がたくさんあります。見た人の反応が、「分かりました。」と「知りたい!」ぐらい差がある。広告に必要なのは、後者であると私は考えています。しっかりと伝えることは確かに重要ですが、分かりやすく伝えきってしまうと、納得で終わってしまうこともあるので注意が必要です。

 

 

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分解すれば組み立てられる?

 

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 分解したボールペンを目の前に置かれたら、きっとほとんどの人が組み立てられます。それは、学校の授業中や仕事で集中できないときなどに一度は分解したことがあるからです。でも、分解したことのなかったら、素材としてバラバラの状態で手元にあったとしても、組み立てることができません。

 

以前、模写で学ぶことが重要だといった記事を書いたことがありますが、同様に「分解」もとても良い勉強になると思っています。例えば、お気に入りのカッコいいポスター。それを、背景の写真と文字とロゴと…、といった感じで少しずつ分解してみるわけです。それをさらに、背景は元々の写真と色のグラデーションと絵っぽく加工しているなど、細かく分解。すると、どういう素材から成り立っているのかを知ることができます。そうしたらもう、きっと同じようなポスターを作ることができるように♪実際は、そんなに簡単にいかないところもありますが、何でできているのか?を知ることはとても重要。目の前の素材で何が作れるかを考えられるのは、その素材でできているものを知っていなければなりません。

 

 

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第三者が紹介しやすい?

 

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「良いのは十二分に理解できるけど売れない」小売店に勤めていたときに販売スタッフからそう言われました。理由をたずねると「良さを伝えづらいから」。手間がかかっていて、貴重な材料を使っていて、見た目がカッコいいのは分かるけれど、どれも伝えづらいということでした。

 

三者が紹介しやすいか?そこからそれを考えるようになりました。もちろん、人それぞれが感じ取る良さもありますし、分かる人にだけ分かる良さもあります。でも、それだけでは成り立たないモノもある。そこで、誰でも伝えられるような工夫が必要になってくるわけです。多くの人が共通で持っている価値観や知識に重ねたり、分かりやすい言葉に置き換えられるポイントをつくる。芸術作品では必要のないことも、商品においては必要になってきます。人も似ていて、自身が商品の一部になっているような人は、その部分を上手く活用しています。分かりやすい簡単な言葉で表現できるポイントを作っていて、誰もが紹介しやすくしているわけです。3つぐらいのキーワードで表現できるとよいという話もよく耳にしますので、何かを考える際は、そこを意識して取り組んでみると、伝わりやすいモノになるかもしれません。

 

 

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それが無かったとしたら?

 

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 固定概念を外すのは、頭では理解していても実践するのはなかなか難しいものです。どうしてもチラついてしまう…。そんなときにオススメの(というか教えてもらった)方法が、「もし、それが無かったらどうする?」です。そうする方法が無い状態から考えてみる方法。

 

例えば、お皿を考えるとなると、“あのお皿”が頭に浮かんでしまいます。それを、「この料理をテーブルで食べる方法が無い…」としてみるわけです。そうすると、考えはじめる段階で、陶器が前提にもならないし、丸い形状が良いとも思わない。家の中でもお弁当箱のような箱型が良いと考えるかもしれないし、直にそこに置けるようなシートを考えるかもしれないし、調理したフライパンからお皿に移す必要もないと考えるかもしれません。それぐらい変わります。もちろん、結果的に今ある“あのお皿”に近いものになっていくこともありますが、同じような見た目でも考える視点が大きく異なっていることが実感できます。「もし、それが無かったらどうする?」この方法も完全に固定概念を外れるわけではありませんが、考え方を変えるきっかけとしては使えると思います。

 

 

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ひと通り試してみる?

 

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 発想が止まる瞬間があります。それは、良さそうなアイデアの種が見つかった瞬間。「よしっ!」となって、そこから考えはじめていきます。もちろん、良いと思えたそれはきっと良いアイデアになる。ただ、そこだけでGOをかけてしまうのは若干もったいないかもしれません。

 

もし前述の手段で良いと思えるものが出てこなかったときには、普段なら、また別の手段を用いて探していっているはずだからです。つまり、まだ使っていない手段がある状態。そこを試してみる価値があるわけです。もしかしたら、まだ試していない手段でもっと良いものが出せるかもしれない…。持っている手段の種類は人それぞれあると思いますし、私も決して多く持っているわけではありませんが、ほとんどの場合はひと通り試すようにしています。せっかく身に付けたものなら、使わない手はありません。試してみて新たに良いものが見つからなかったとしても、自身が出せるベストのアイデアであることが確認できます。それで結果が振るわなかったとしても後悔しないし、「もっと別の手段を増やしてみよう!」と思うきっかけにもなります。

 

 

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ゴニョゴニョ描く?

 

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 考えはじめた段階でスケッチを描くとき、私は小さいメモ紙などにゴニョゴニョときたなく描いています。詳細がよく分からないぐらいの感じ。そうすると、そこからまた想像が膨らんで展開できるんですよね。キッチリきれいに描いたら、それはもうそれ。展開することができないわけではありませんが、具体像が描けすぎてしまうと縛られてしまうこともあります。

 

言葉で情報を整理し直したりアイデアを展開するときも同じで、はじめは抽象的なワードを出します。その1つ1つを掘り下げて具体的なワードを出していく。すると、はじめから具体的なところで拡げていくことでは見つからない面白い発見があったりします。時には、自分で出しておきながらハッとさせられることも…。「母の日に喜ばれるプレゼント」で考えはじめるよりも、「大切な人からしてもらったら嬉しいこと」ぐらいから考える。後者は漠然としていますが、それでOK。普段、ネット検索で、具体的なワードで検索してもありきたりのものしか見つけられなかったのが、抽象的なワードで検索してみると普段とは異なる結果が出てきたりします。はじめは抽象的で。あくまで私の好きな方法です。

 

 

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特別な感覚は要らない?

 

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 私はごく普通のおじさんです。流行りの髪型もしていないし、最先端の服装もしていません。洒落た場所にも滅多に行かない。仕事の一環として、そういった情報に目を通しはするものの、普段は街のスーパーで買い物をして、赤提灯の飲み屋さんで一杯やっています。

 

以前、デザイナーっぽい格好をして、オシャレなお店に行って、みたいなことを集中的にやってみたことがありました。すると、無意識のうちにオシャレな人側の視点がスタンダードになっていて、そのとき自分がデザインを届ける対象の人たちの感覚からズレていることに気付きました。「あぁ…戻さなきゃ…」私たちがモノやサービスを届ける人の大半は、そんなオシャレな生活をしている人ではありません。だったら、同じ感覚を持っていた方がいい。「これで3,000円なら買うでしょ!」「無料なら駅から遠いこの場所でも来てくれるでしょ!」といった意見が平気で出てくるのは、ズレてきている証拠。普通でいることは、ある意味で大切だとも思っています。感覚がズレてもいろんな立場の人の目線に立って考えられますが、同じ感覚でいるほうが共感を得られるような気がします。

 

 

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その人に馴染みのあるモノ?

 

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 テレビCMで昔の曲が流れると、人気が再燃しているから使っていると思いがちですが、実際はそうではありません。そのCM のターゲットが昔聴いていた曲を流すことで、自分に関係のある商品だと感じさせているんです。

 

自分たちの商品やサービスを誰かに届けたいときに、その魅力をしっかりと伝えることは大切なことですが、それが馴染みのないモノだとなかなか関心を持ってもらえません。「いやいや、ピッタリの商品だから大丈夫!」と思われるかもしれませんが、目新しいモノに取っ付きづらくなっている人や普段の習慣からの変化を避ける人もたくさんいます。そこで、馴染みのあることを介して近づいてもらう方法があります。前述のCMに流す曲もしかり。他には、普段よく出くわす場面や習慣的に行うことと組み合わせるなどがあります。広告に限らず、馴染みのある色や形、素材や雰囲気にするだけで、それまで疎遠だった人が気にしてくれることも。「分かる人にだけ分かればいい」「魅力さえ届けば…」と考える気持ちも分からなくもありませんが、届けたい人に歩み寄ることも必要です。

 

 

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伝わらないシンプル?

 

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 シンプルなデザインほど難しい。一見、簡単そうに見えますが、少なくとも私にとってはシンプルにすることは難題です。「端折って伝わらないくらいなら全部伝えなさい!」と指導されたことがありますが、シンプルにはなっているものの機能していないデザインをいろんなところで見かけます。

 

例えば、トイレのマーク。同じ素材で似たようなデザインで見分けがつきづらかった経験はありませんか?よく目にする青と赤、タキシードとスカートのピクトグラム(アイコン)で迷ったことはありません。LGBTなどのセクシャルマイノリティの方たちへの配慮などで見直されている最中ですが、きっとシンプルに表現するのは難しいのではないでしょうか。話がズレてしまいましたが、兎にも角にもシンプルは難しい。学校や職場で「シンプルに!」と教えられたり、シンプルが正かのような価値観を持ってしまうと、本来の伝えるところが見えなくなって、それで伝わっているかのような錯覚をおこしてしまいます。ゴチャゴチャしていても、それでしっかりと伝わっていたとしたら、それはそれで正解。安易にシンプルにする必要はありません。

 

 

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楽しみはとっておく?

 

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 むかし、チラシをつくっていたときに、先輩に「どうして情報を減らした方が良いのか?」と尋ねました。すると、「だって、全部分かっちゃったら楽しみがないじゃん♪」その回答でスッキリ。デザインをスッキリさせるために情報量を減らすと教えられるより、よっぽど分かりやすいですよね。

 

全部言わない。映画やドラマの予告も、内容が丸わかりのようで、肝心なところは隠して伝えています。時と場合によっては、伝えなくてよいこともある。例えば、商品紹介をWebサイトに掲載する際、YAHOOや楽天のようにあらゆる疑問に答えているかのように事細かに情報を掲載しているのを真似したりします。もし、自分たちが紹介する商品を実店舗に見に来てほしいとしたら、それだけ分かってしまったら見に行く楽しみがほとんど無くなってしまいます。実物を見てみたい!と思えるような情報に留めておいてもよいわけです。今の時代は、詳細が分からないと行動に移してもらえないといった点も確かにありますが、同時に現場での楽しみに対する期待も高い。そのバランスは難しいかもしれませんが、告知で楽しんでもらう以上に、現場で楽しんでもらえる工夫は必要です。

 

 

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実際に使ったことがない?

 

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 目の前の課題に取り組むときに、なかなか思考が展開しなかったり、的はずれなアイデアになってしまうことがあります。個々の技量の問題かもしれませんが、私の経験上、そもそもその課題となっている商品やサービスをあまり利用しない、もしくは使ったことがない、というケースが結構な割合でありました。

 

例えば、ショッピングサイトを使いやすくするためのアイデアを考える。それなのに「私は実際にモノを見て購入するタイプなので、オンラインでは購入したことがありません」と平然と語る人がいます。ちなみに若い頃の私がそれです。先輩から、「何でもいいから実際に購入してみなさい!」と指導されて渋々購入してみると、当たり前ですが、想像では発見できない気になるポイントがいくつも見つかりました。(本当な実際に見直すサイトで購入すればよかったのですが、自腹を切って試すにはあまりに高額だったので先輩が似たサイトでよいと言ってくれました。)広告を作るのに、その商品を直に見たこともない。魅力を伝える仕事なのに、行ったこともない。情報を調べて分かったような気になってしまうと、その人だからこそ見つけられるモノが本当はあっても見つけられないかもしれません。

 

 

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Excelでポスターをつくる?

 

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 PowerpointIllustratorなどのソフト。自由に描写ができるのでとても便利で、使い慣れてある程度自由がきくようになると、何となくキレイに出来た気になって本質的なところがおざなりになってしまうことがあります。考えはじめる際に、いきなりパソコンでソフトを開く人は要注意。

 

学生時代にみんなが使いはじめた頃のとある授業で、OfficeのExcelでポスターを作成するという課題がありました。加工が出来ないなど、これまで自由に出来たことの様々な部分に制限がかかるわけです。みんなが四苦八苦して作成したそれらは、どれも“それっぽく”化粧したものばかり。制作環境に不満を漏らす生徒もいましたが、そこで先生が出したあるグラフィックデザイナーのポスターでぐうの音も出なくなりました。しっかりとメッセージが伝わる美しいポスターだったからです。続けて、「優れたデザイナーは、Excelでも十分に素晴らしいポスターが作れる」と。この授業は、私にとって考え方の基本となった岐路です。装飾をしたり、テクニックを使ったり、他の何かで補ってしまうと、本当に伝えるべきところが多少おろそかでも成立しているように錯覚する落とし穴があります。

 

 

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相手のアイデアが広がる?

 

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 私は提案をする際、わざと一例として提示することがあります。これしかあり得ない!と示さずに、企画内容を具体的に実行する例を1つ挙げるわけです。もちろん内容によりますが、そうすることで「じゃあ他に何があるの?」と興味を持ってもらったり、「それならこういう方法もあるね!」と意見を引き出したりできるからです。

 

相手を納得させなければ…と意気込んでしまいがちですが、それよりも大事なのは、相手に前のめりになってもらうこと。もっというと参加してもらうぐらいが良いと思っています。余白を持って提案にのぞむんです。ただ一例と言っても、それは自身のベストの具体策でなければいけません。それを一例として、二例目、三例目をこっそり用意しておくんです。そうすることで、「じゃあ他に何があるの?」にスムーズに返答できますし、相手の人が出してくれた別案にもリアクションできる。そうしていくうちに、いつの間にか相手の人にとっての提案にもなっていて、真剣に向き合ってくれるようになります。隙のない完璧な案を示すのも大事なことですが、一緒に考えてもらう・一緒に考えたくなるようにするのも時には大事なことだと考えています。

 

 

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