デザインのあてな

身近なところにデザインのヒント

ゴニョゴニョ描く?

 

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 考えはじめた段階でスケッチを描くとき、私は小さいメモ紙などにゴニョゴニョときたなく描いています。詳細がよく分からないぐらいの感じ。そうすると、そこからまた想像が膨らんで展開できるんですよね。キッチリきれいに描いたら、それはもうそれ。展開することができないわけではありませんが、具体像が描けすぎてしまうと縛られてしまうこともあります。

 

言葉で情報を整理し直したりアイデアを展開するときも同じで、はじめは抽象的なワードを出します。その1つ1つを掘り下げて具体的なワードを出していく。すると、はじめから具体的なところで拡げていくことでは見つからない面白い発見があったりします。時には、自分で出しておきながらハッとさせられることも…。「母の日に喜ばれるプレゼント」で考えはじめるよりも、「大切な人からしてもらったら嬉しいこと」ぐらいから考える。後者は漠然としていますが、それでOK。普段、ネット検索で、具体的なワードで検索してもありきたりのものしか見つけられなかったのが、抽象的なワードで検索してみると普段とは異なる結果が出てきたりします。はじめは抽象的で。あくまで私の好きな方法です。

 

 

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特別な感覚は要らない?

 

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 私はごく普通のおじさんです。流行りの髪型もしていないし、最先端の服装もしていません。洒落た場所にも滅多に行かない。仕事の一環として、そういった情報に目を通しはするものの、普段は街のスーパーで買い物をして、赤提灯の飲み屋さんで一杯やっています。

 

以前、デザイナーっぽい格好をして、オシャレなお店に行って、みたいなことを集中的にやってみたことがありました。すると、無意識のうちにオシャレな人側の視点がスタンダードになっていて、そのとき自分がデザインを届ける対象の人たちの感覚からズレていることに気付きました。「あぁ…戻さなきゃ…」私たちがモノやサービスを届ける人の大半は、そんなオシャレな生活をしている人ではありません。だったら、同じ感覚を持っていた方がいい。「これで3,000円なら買うでしょ!」「無料なら駅から遠いこの場所でも来てくれるでしょ!」といった意見が平気で出てくるのは、ズレてきている証拠。普通でいることは、ある意味で大切だとも思っています。感覚がズレてもいろんな立場の人の目線に立って考えられますが、同じ感覚でいるほうが共感を得られるような気がします。

 

 

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その人に馴染みのあるモノ?

 

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 テレビCMで昔の曲が流れると、人気が再燃しているから使っていると思いがちですが、実際はそうではありません。そのCM のターゲットが昔聴いていた曲を流すことで、自分に関係のある商品だと感じさせているんです。

 

自分たちの商品やサービスを誰かに届けたいときに、その魅力をしっかりと伝えることは大切なことですが、それが馴染みのないモノだとなかなか関心を持ってもらえません。「いやいや、ピッタリの商品だから大丈夫!」と思われるかもしれませんが、目新しいモノに取っ付きづらくなっている人や普段の習慣からの変化を避ける人もたくさんいます。そこで、馴染みのあることを介して近づいてもらう方法があります。前述のCMに流す曲もしかり。他には、普段よく出くわす場面や習慣的に行うことと組み合わせるなどがあります。広告に限らず、馴染みのある色や形、素材や雰囲気にするだけで、それまで疎遠だった人が気にしてくれることも。「分かる人にだけ分かればいい」「魅力さえ届けば…」と考える気持ちも分からなくもありませんが、届けたい人に歩み寄ることも必要です。

 

 

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伝わらないシンプル?

 

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 シンプルなデザインほど難しい。一見、簡単そうに見えますが、少なくとも私にとってはシンプルにすることは難題です。「端折って伝わらないくらいなら全部伝えなさい!」と指導されたことがありますが、シンプルにはなっているものの機能していないデザインをいろんなところで見かけます。

 

例えば、トイレのマーク。同じ素材で似たようなデザインで見分けがつきづらかった経験はありませんか?よく目にする青と赤、タキシードとスカートのピクトグラム(アイコン)で迷ったことはありません。LGBTなどのセクシャルマイノリティの方たちへの配慮などで見直されている最中ですが、きっとシンプルに表現するのは難しいのではないでしょうか。話がズレてしまいましたが、兎にも角にもシンプルは難しい。学校や職場で「シンプルに!」と教えられたり、シンプルが正かのような価値観を持ってしまうと、本来の伝えるところが見えなくなって、それで伝わっているかのような錯覚をおこしてしまいます。ゴチャゴチャしていても、それでしっかりと伝わっていたとしたら、それはそれで正解。安易にシンプルにする必要はありません。

 

 

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楽しみはとっておく?

 

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 むかし、チラシをつくっていたときに、先輩に「どうして情報を減らした方が良いのか?」と尋ねました。すると、「だって、全部分かっちゃったら楽しみがないじゃん♪」その回答でスッキリ。デザインをスッキリさせるために情報量を減らすと教えられるより、よっぽど分かりやすいですよね。

 

全部言わない。映画やドラマの予告も、内容が丸わかりのようで、肝心なところは隠して伝えています。時と場合によっては、伝えなくてよいこともある。例えば、商品紹介をWebサイトに掲載する際、YAHOOや楽天のようにあらゆる疑問に答えているかのように事細かに情報を掲載しているのを真似したりします。もし、自分たちが紹介する商品を実店舗に見に来てほしいとしたら、それだけ分かってしまったら見に行く楽しみがほとんど無くなってしまいます。実物を見てみたい!と思えるような情報に留めておいてもよいわけです。今の時代は、詳細が分からないと行動に移してもらえないといった点も確かにありますが、同時に現場での楽しみに対する期待も高い。そのバランスは難しいかもしれませんが、告知で楽しんでもらう以上に、現場で楽しんでもらえる工夫は必要です。

 

 

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実際に使ったことがない?

 

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 目の前の課題に取り組むときに、なかなか思考が展開しなかったり、的はずれなアイデアになってしまうことがあります。個々の技量の問題かもしれませんが、私の経験上、そもそもその課題となっている商品やサービスをあまり利用しない、もしくは使ったことがない、というケースが結構な割合でありました。

 

例えば、ショッピングサイトを使いやすくするためのアイデアを考える。それなのに「私は実際にモノを見て購入するタイプなので、オンラインでは購入したことがありません」と平然と語る人がいます。ちなみに若い頃の私がそれです。先輩から、「何でもいいから実際に購入してみなさい!」と指導されて渋々購入してみると、当たり前ですが、想像では発見できない気になるポイントがいくつも見つかりました。(本当な実際に見直すサイトで購入すればよかったのですが、自腹を切って試すにはあまりに高額だったので先輩が似たサイトでよいと言ってくれました。)広告を作るのに、その商品を直に見たこともない。魅力を伝える仕事なのに、行ったこともない。情報を調べて分かったような気になってしまうと、その人だからこそ見つけられるモノが本当はあっても見つけられないかもしれません。

 

 

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Excelでポスターをつくる?

 

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 PowerpointIllustratorなどのソフト。自由に描写ができるのでとても便利で、使い慣れてある程度自由がきくようになると、何となくキレイに出来た気になって本質的なところがおざなりになってしまうことがあります。考えはじめる際に、いきなりパソコンでソフトを開く人は要注意。

 

学生時代にみんなが使いはじめた頃のとある授業で、OfficeのExcelでポスターを作成するという課題がありました。加工が出来ないなど、これまで自由に出来たことの様々な部分に制限がかかるわけです。みんなが四苦八苦して作成したそれらは、どれも“それっぽく”化粧したものばかり。制作環境に不満を漏らす生徒もいましたが、そこで先生が出したあるグラフィックデザイナーのポスターでぐうの音も出なくなりました。しっかりとメッセージが伝わる美しいポスターだったからです。続けて、「優れたデザイナーは、Excelでも十分に素晴らしいポスターが作れる」と。この授業は、私にとって考え方の基本となった岐路です。装飾をしたり、テクニックを使ったり、他の何かで補ってしまうと、本当に伝えるべきところが多少おろそかでも成立しているように錯覚する落とし穴があります。

 

 

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相手のアイデアが広がる?

 

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 私は提案をする際、わざと一例として提示することがあります。これしかあり得ない!と示さずに、企画内容を具体的に実行する例を1つ挙げるわけです。もちろん内容によりますが、そうすることで「じゃあ他に何があるの?」と興味を持ってもらったり、「それならこういう方法もあるね!」と意見を引き出したりできるからです。

 

相手を納得させなければ…と意気込んでしまいがちですが、それよりも大事なのは、相手に前のめりになってもらうこと。もっというと参加してもらうぐらいが良いと思っています。余白を持って提案にのぞむんです。ただ一例と言っても、それは自身のベストの具体策でなければいけません。それを一例として、二例目、三例目をこっそり用意しておくんです。そうすることで、「じゃあ他に何があるの?」にスムーズに返答できますし、相手の人が出してくれた別案にもリアクションできる。そうしていくうちに、いつの間にか相手の人にとっての提案にもなっていて、真剣に向き合ってくれるようになります。隙のない完璧な案を示すのも大事なことですが、一緒に考えてもらう・一緒に考えたくなるようにするのも時には大事なことだと考えています。

 

 

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本のタイトルに習う?

 

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 つい忘れてしまいがちなのが、商品にしても広告にしても、数多あるモノの中に並ぶという点です。そこに意識が向いていないと、残念なことにどんなに素晴らしいモノでも埋もれてしまう場合もあります。そこで、埋もれない目を引く工夫が求められるわけです。

 

様々なテクニックがあると思いますが、とても簡単な方法を1つ。それは、本のタイトルからヒントを得る方法です。隣同士に競合商品が並ぶ本屋さんでは、手に取ってもらうために本の装丁やタイトルで目を引かなければなりません。そのため、特に平積みされるような本は、徹底的に考え抜かれたタイトルになっています。例えば、「30歳までに身に付けておきたい〇〇」は、20代後半~30代前半の人が気になります。30代後半・40代の人が「どれどれ(笑)」と上から目線で見たり、意識の高い学生が手に取るかもしれません。広いターゲットに注目してもらうために、あえて「30歳までに~」と具体的な数字でフックを作っていると捉えることができます。他にも「~しなくていい」や「3つの〇〇」なども同様。そのまま利用したらパクリになってしまいますが、考え方や狙いを別の何かに置き換えてアイデアを練ると、今まで見つけられなかった工夫に辿りつくことがあります。

 

 

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家族が喜ぶプレゼント?

 

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 社会問題を解決する〇〇…。そんな難しいことは一筋縄では考えらません。でも、自分の住んでいる町の人たちを、働いている会社を、家族を、と対象を狭めていけば考えやすくなっていきます。親友が喜んでくれそうなプレゼントだったら、考えやすいですよね。

 

(他人のことは言えませんが…)考えるのが苦手な人は、いきなり難しいところから入ろうとしている傾向があります。豊富な知識と経験を兼ね備えた人ならそれができるかもしれませんが、ほとんどの人は難しい。けれど、前述のように親友が喜ぶプレゼントなら考えられます。しかも、それは喜んでくれる確率がとても高い素晴らしいアイデア。今回オススメしたいのは、その対象を少しずつ広げていくという方法です。お母さんが喜ぶプレゼントなら、それをお母さんもお父さんも喜ぶモノに、家族みんなが喜ぶモノにしていく。そうすると、共通する何かが見い出せたり、どうして上手く考えられないかが分かったりします。あとはその応用。いきなり考えたアイデアでは辿り着けない、自分が考えやすいところまで一度対象を狭めて、そこからあらためて広げていくことで見つかるアイデアもあります。

 

 

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機能に機能を加えない?

 

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 魅力的なモノにさらに魅力を加えれば、より魅力的になる。そういった考えも確かにあります。豪華絢爛な空間は魅力的ですし、ブルーレイレコーダーや十徳ナイフのように機能に機能をプラスした商品もたくさんある。しかし、逆に魅力が半減したり、機能性が落ちてしまうこともあります。

 

掛け合わせるのは、違うこと。特に新しい視点や解決策を考えたり、そこに強いメッセージを込める場合、同じものを掛け合わせても相乗効果を生み出すことは難しいと考えています。考えるべきは、機能+機能ではなく、機能+(別の何か)です。例をあげると、「場所」や「人」や「時間」、最近よく言われる要素は「体験」です。家の中で水を飲むならコップで十分ですが、持ち歩く(場所)となったら水筒、口紅が付かないように(人)となったらストロー、非常時(時間)となったら常備するためのペットボトルなどに変わります。それが私の考えるデザイン。多機能を否定するわけでは決してありませんが、それは技術的ないわゆる開発の分野であることが多いんですよね。「メガネにスマホの機能を…」みたいな発想はおもしろいんですが、私たちがやるべきところはそこではないというのが私の考えです。

 

 

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「あった方がいい」は使わない?

 

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「あった方がいい」は無くてもいい。それは、学生時代に口酸っぱく教えられたことです。提案する際につい使ってしまいがちな「あった方が良いと思うんです」といった表現。「…ってことは無くてもいいんですね?」と意地悪な返しをされてしまうんですが、悔しいけれどその通り。断言できないのは、絶対に必要だとまで言える自信がないからです。

 

とはいえ、自信を持って強いメンタルで提案しなさい!と言われても、なかなかできることではありません。私も同様ですが、そんなタイプの人には、「こうあるべきです!」と半ば強制的に言うことをオススメしています。自身が無くても断言する。結局、いろいろと穴を指摘されてしまうわけですが、それが次の提案に生きてきますし、何より断言することで自ずと提案のクオリティーが上がります。「強く言うからには、もうちょっと見直さないとなぁ…」みたいな意識がはたらく。それを繰り返しているうちに、無理やり使っていた「あるべき!」が、いつの間にか気持ちのこもった「あるべき!」に変わっています。気持ちの問題ではあるんですが、なかなか自信を持てない人は騙されたと思って試してみてください!

 

 

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あのとき私はこうしたい?

 

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 身の回りにはたくさんの便利なモノが溢れ、新しい切り口でデザインを考えようとしても既に在る場合がほとんど…。いざ考えようとしても、既存のモノをより良くする方法など、何かの派生になってしまうことがよくあります。

 

切り口を変えてと言われても、なかなかアイデアが考えられない。そんなときは、自身が体験したシーンを思い浮かべたり、想像したりしてみてはいかがでしょう。「あのとき不便を感じたな~」「別にできないことはないけどちょっとストレス…」「こういうときに限って〇〇」など、シーンを頭に描くわけです。すると、そこに最適なモノやサービスがよく考えてみると無かったりする。それが、アイデアの糸口になります。もし、それを解決できる何かをカタチにできたら、それはきっと新しいアイデア。これだけ便利な世の中で適した何かが見つからないのは、まだ誰もそこに注目できていないことである可能性が大きいということです。シーンを想像するのが難しかったら、実際の体験を思い出すだけでOK。同じような体験をした人が必ずいるので、その体験を生かしたモノを考えられたら、他の似た経験をした人の力になれるかもしれません。

 

 

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これしか使えない?

 

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 デザインの自由度が高いほどおもしろいのは確かですが、その分難易度は上がります。難しいのは条件がないから。条件がたくさんあると一見考えづらそうですが、実はその方が考えうやすい。「自由に考えてください!」と投げかけられると、思考が停止してしまうそうになります。

 

私がたまに選ぶ方法は、制限すること。アイデアが広がらなかったり、思考が停滞してきたら、さらに自分で勝手に条件を付け加えるんです。例えば、10万円の予算があっても「1万円しか使えない!」という条件をつける。実施日はこれから設定するのだとしても「明日実施することになった!」とする。そうやって条件を厳しくすると、嫌でもアイデアが出てきます。少し条件が厳しくなる程度だと、使うものを節約したり、規模を縮小したりしてしまうので、できれば無謀な条件がオススメ。「(そんなこと言われても無理だよ…)」というぐらいの条件を突きつけられると、職人気質であればあるほど燃えます!その熱は、経験上良い結果を生みます。条件は自分で設定するのもアリですが、都合の良い条件をつけてしまいそうだったら、周囲の誰かに設定してもらうのもよいかもしれません。

 

 

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